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英語の音節

   ここでは、英語の音節表と音節総括表とを掲げ、英語の特徴について述べる。
   ここで音節とは連続する言語音を区切る分節単位の一種である。典型的には母音(単母音または多重母音)を中心に、その母音単独で、あるいはその母音の前後に1個又は複数個の子音を伴って構成する音声(群)で音声の聞こえの一種のまとまりを言う。中国語では、1音節の冒頭の子音を声母と呼び、残りの母音+子音を韻母と呼ぶ。たとえば、中国語では「広」という漢字のローマ字表記(拼音)はguangであるが、gが声母で、uangが韻母である。
   (1)英語は、単語の数が豊富で、それに従って音節数が多い。筆者は、韻母の第一母音ごとに縦方向に声母を、横方向に韻母を並べ、手元の英和辞典1)に基づいて音節表を埋めていった。この英和辞典では、たとえばdic·tion·ar·yのように見出しの単語に音節の区切りが示されている(dic·tion·ar·yは、d、tが声母で、ic、ionが韻母であり、ar及びyには声母がなく韻母のみで表記されており、4音節の単語である)。音節表を完成させた結果、綴り字ベースの音節の総数は、8,989になった(別紙音節表参照)。これは諸言語中でもっとも多いのではなかろうか?単語は、一つ以上の音節の組合せであるから、語彙も豊富になる。漢字は、1文字1音節なので、漢字の単語は、英語と同じように音節を組み合わせて作られている。英語は、アングロサクソン語、ロマンス語(ラテン語から発展した言語で、フランス語、イタリア語、スペイン語など)、古代ラテン語、古代ギリシャ語等多くの言語から語彙を取り入れている。たとえばbeginはアングロサクソン系の語で、commenceはロマンス語系であり、意味は「始める」である。psychology(心理学)は、psychoが古代ギリシャ語を起源とする接頭辞で、ラテン語でpsychologiaとなった。bacteria(細菌)も古代ギリシャ語からラテン語を経て英語に導入された。一般的に学術用語、特に医学用語はギリシャ語系、ラテン語系の語が多い。
   (2)英語は、全体的に1単語を構成する音節数が少なく、単音節の語が多い。したがって、単音節の単語のみを使って文が書けると言われている。これに関連して動詞には一見して動詞と分かる綴りがない。たとえば、英語にはcome、go、give、takeなどの単音節の動詞があるが、これに相当するドイツ語の動詞はそれぞれ2音節のkommen、gehen、geben、nehmenであって、動詞の不定形(活用する前の元の形)にはenが付き、1音節の不定形はない(例外はtun(英語のdoと同族後で意味は「する」)のみ)。また英語のhand、smoke、placeは動詞と名詞が同形であり、形の上から品詞の区別は付かない。handの場合、名詞の基本的な意味は「手」で、動詞の基本的な意味は「渡す」であり、これらに相当するドイツ語はHand(ドイツ語の名詞の頭文字は必ず大文字にする)及びaushändigenである。smokeの場合、名詞の基本的な意味は「煙」で、動詞の基本的な意味は「煙を出す」又は「タバコを吸う」であり、これらに相当するドイツ語はRauch及びRauch ausspeien又はrauchenである。placeの場合、名詞の基本的な意味は「場所」で、動詞の基本的な意味は「置く」であり、これらに相当するドイツ語はPlatz及びsetzenである。このように不定形に関して、英語の基本動詞は単音節の単語が多いが、ドイツ語の場合、上記tunの例外を除き2音節以上である。
   (3)発音と綴りの間の関係は一貫性が乏しい。これは、17世紀以降は表音主義よりも伝統主義・語源主義の方が優勢で、古い発音に基づく綴りが固定化した。つまり、過去には発音していたがその後発音されなくなった文字が綴りに残っているので、表音文字を使いながら表象的(視覚的)な文字の組合せになっている。音節表は、本来発音ベースで作成すべきであるが、今回は綴り字ベースで作成した。というのは、英語は、同音異綴りの語又は音節が多く、表音文字(ローマ字、キリル文字、ギリシャ文字、ハングル)を使っている他の言語と比較するとき英語の特徴がよく分かると思うからである。
繰り返しになるが、英語は、日本語で言う「歴史的仮名遣い」を今でも使っている。たとえば、nightやknightはいわゆる現代仮名遣いに改めるなら両者ともnite、すなわち発音記号で[nait]となる。nightはドイツ語のnachtと同族語で、中世英語ではnyhtと綴っていた。現在のnightに含まれるghはある時期から徐々に発音されなくなったが、綴りとしては残された。またknight(騎士)は、ドイツ語のknecht(しもべ)と同族語で、中世英語ではknihtと綴っており、[kniçt](クニヒト)と発音していた。現在のknightに含まれるk及びghもある時期から徐々に発音されなくなったが、綴りとしては残された。
   また発音が[rait]で表される語は、①right(正しい、権利、右の)、②rite(儀式)、③wright(職人)及び④write(書く)の4つある。これらの語は、①ドイツ語のrechtの同族語で中世英語のriht、②中世英語のritus、③中世英語のwrighte又はwrihte、及び④中世英語のwritenとなっていて、発音が変化した事情は上記のnightやknightと同じと見られる。もしこれらの語を発音どおりriteという表記に改めていれば、綴り字上からは意味の判断ができず文の前後関係から判断するしかない。
   さらに発音[k]を表す文字はcar [kɑ꞉]、cold [kould]、cup [kʌp]などのc、chemical [kemikəl]、chi [kai]、psychology [saikɑlədʒi]などのch、quay [ki꞉]などのqu、king [kiŋ]のk及びoxygen [ɑksidʒən]のx([ks]の二重子音)など多岐に渡っている。chはchair[tʃɛə]、chip [tʃip]、chop [tʃɑp]などに見られるように発音[tʃ]を表すこともある。cは、circle [sə꞉kl]、center [sentə]などのように発音[s]を表すこともある。chはchevalier [ʃevəliə]、chevron [ʃevrən]などのように発音[ʃ]を表すこともある。
   もう一度psychologyを例にとれば、もし綴りをsicologyと改めていれば意味の判別が困難になることは無かったであろうが、sicという文字の組合せが平凡なだけにpsychという文字の組合せを使った単語が「精神的な」に関連した意味をもつことは一目瞭然である。すなわちpsychologyは、表音的というよりむしろ表象的である。ちなみに英語のpsychologyはドイツ語ではPsychologie、フランス語ではpsychologieと綴り、発音記号はそれぞれ[psyçologi꞉]及び[psikᴐlᴐʒi]でありいずれも語頭のpを発音している。
   また、英語では現在発音されない文字を綴り字に残している単語が多い。knee、knife、knight(既出)、knit、knob、knock、knot、knowなど語頭がknの語についてkは一切発音されない。knowとnoの発音は両方とも[nou]で同音異綴り語であり、knowを発音に従ってnoに統一すれば、実用上文を理解する上で支障が生じるだろうし、knowのkを無くせばnowとの区別が付かないのでknowをそのまま存続させるのはやむをえないだろう。さらに、wrap、wrench、write、wrongなど語頭がwrの語については、wは一切発音されない。writeについてはすでに述べたとおりである。これらの事柄から同音異綴り語が多いことが分かる。また、psalm [sɑ꞉m]、接頭辞のpneumo [nju꞉mə]、pseudo [sju꞉dou]、psycho [saikou](上記)などは語頭のpを発音しない。語中で発音されない文字は、should [ʃud]とwould [wud]のl、indict [indait]のc、語末で発音されない文字はbomb [bɑm]、plumb [plʌm]のbなどである。
英語にはgate、size、note、cuteなどのように単子音+短母音+単子音+eの4文字からなる語が多い。これらの語は初めの母音をその母音の名称と同様に発音し、最後のeは発音しない。これらの語の発音記号[ɡeit] [saiz] [nout] [kju꞉t]を見ればそれがよく分かる。ところが、have、loveなどは[heiv] [louv]ではなく、[həv] [lʌv]と発音する。これも発音と綴りの間の関係に一貫性がない例である。
   (4)これは音節とは直接関係ないが、印欧後には文法的に「法(英語ではmood)」があって、これに従って動詞の活用形が変化する。「法」とは文法の形態意味的範疇に属し、文が表す出来事の現実との関係(事実的か反事実的か)や意図、聞き手に対する態度などを表し、特に動詞の形態に反映される。英語の「法」は直説法、命令法、仮定法の3つに分けられる。動詞の不定詞beの過去分詞はbeenで、現在分詞はbeingである。これの変化形として直説法現在一人称単数am、同複数are、二人称単数複数ともにare、三人称単数is、そして三人称複数areであり、形態的にはam、is、areの3つである。直説法過去では、すべての人称で、単数was、複数wereで形態的にはwas、wereの2つである。命令法では不定詞が使われ形態変化はない。仮定法現在では動詞beは全く変化しない。be以外の動詞、たとえばgoでは、過去分詞goneで現在分詞はgoingである。直説法現在では三人称単数でgoesとする以外すべてgoである。命令法でも変化しない。仮定法現在でも三人称単数にsを付けない。直説法現在完了ではhave (has) + 過去分詞の形態を、直説法過去完了ではhad + 過去分詞の形態をとる。
ドイツ語では、不定詞、過去分詞、現在分詞、直説法に現在、現在完了、過去、過去完了、未来、未来完了があり、条件法に第一、第二があり、接続法に現在、現在完了、過去、過去完了、未来、未来完了があり、さらに命令法がある。これら各々に動詞の変化形が使われており、その中には同形も多数あるとはいえ、動詞の変化形は非常に多い。つまり英語では動詞の変化形が少ないので、その分単語数がすくない。
1)小学館「英和中辞典」(1980)

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