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随筆 「あさが来た」の大阪弁

 2015年9月末に放送が開始されたNHK連続テレビ小説「あさが来た」は、トップの視聴率を誇っている。このドラマは、主な舞台が大阪になっているので、基本的に大阪弁が使われている。このドラマは、大阪弁の指導が行き届いているようで、関西以外の出身の俳優もよく大阪弁をこなしていると思う。ただ、日本語の話しことばは、アクセントで意味を区別しているので、俳優がアクセントを間違えてしゃべると大阪弁の分かる視聴者は、セリフを聴いて一瞬理解に苦しむことがある。今回はその具体例を挙げてみよう。
(1)「うち(私)」と「うち(家)」
大阪弁では、「うち(私)」を低中又は低低アクセントで、「うち(家)」を高低アクセントで区別する(「うち(私)」は、「うち、」のように助詞を伴わずに文頭にくるときは低中で、「うちの」のように助詞を伴うときは低低中になる)。ところが、このドラマでは「うち(私)」を高低アクセントでしゃべっている。そうすると、このドラマには無かったかも知れないが、「私の家」というセリフがあった場合、「うちうち」のアクセントは、高低高低となり区別が付かない。これは大阪弁では、低低高低となる。ちなみに東京弁では「うち(家)」及び「うち(家)の」は、それぞれ低高及び低高高アクセントになる。
(2)「行きやすい」と「生きやすい」
大阪弁のアクセントは、「行きやすい」は高高高低低で、「生きやすい」は低低高低低である。ある俳優が「いきやすい」を高高高低低で発音したので、筆者には「行きやすい」と聞こえたが、実際のセリフは「生きやすい」であることにすぐに気が付いた。
(3)「よって(選って)」、「よって(寄って)」及び「酔って」
大阪弁では、「よって(選って)」は低低高で、「よって(寄って)」は高高低である。これも俳優がアクセントを間違えたため、筆者は一瞬意味が分からなかった。大阪弁の「酔って」と「選って」は同じアクセントだが、実際には「酔うて」と言うことが多い。動詞「酔う」の連用形は、東京弁では「酔います」のように「酔い」であるが、助詞「て」に連なるときは、「酔って」のように促音便が生じる。大阪弁ではウ音便が生じて「酔うて」となる。一般的に大阪弁では、ワ行五段活用の動詞にウ音便が生じる。例:「買って」→「買うて(こうて)」、「会って」→「会うて(おうて)」、「言って」→「言うて(ゆうて)」、「飼って」→「飼うて(こうて)」、「這って」→「這うて(ほうて)」等。参考までに「選る」及び「寄る」の東京弁のアクセントは、それぞれ高低及び低高で、大阪弁では低中及び高高である(「夜」が低高)。
(4)「あさ(人名)」、「あさ(朝)」及び「あさ(麻)」
大阪弁では、「あさ(人名)」は高低、「あさ(朝)」は低高、そして「あさ(麻)」は低中である。「あさ(人名)」と「あさ(朝)」について、俳優がアクセントを間違えていたという記憶はない。
(5)「掘る」と「放る(ほる)」
「放る」は、大阪弁で、「捨てる」を意味する。番組では、俳優が「ほらなあかん」のアクセントを間違えていて、筆者には「掘らなあかん」(掘らないといけない)と聞こえたが、実際には「放らなあかん」(捨てないといけない)の意味で使われていたことがあとで分かった。大阪弁で、「掘る」と「放る」のアクセントはそれぞれ低高と高高である。また、「掘らなあかん」と「放らなあかん」のアクセントはそれぞれ低高低高高高と高高低高高高である。
(6)「円」と「縁」
大阪弁で、「円」と「縁」のアクセントはそれぞれ高低及び低高である。これも俳優がアクセントを間違えていた。東京弁では、2語とも高低である。
(6)補足
筆者は、兵庫県西宮・尼崎・芦屋以外の町に住んだことがない。祖母と父は大阪市西区の出身で、母方の祖母は京都で生まれ育ち、母は西宮で生まれ育った。したがって、大阪弁のアクセントの感覚は、間違っていないと思っている。関西弁となるとアクセントもバラエティーに富んでいて、その地方で生まれ育ったものでないと、その地方でよく使われるアクセントは分からない。
(7)アクセントによる区別
一般的に東京弁より大阪弁の方が、同音異義語をアクセントによって厳密に区別する。それは上記(1)、(3)及び(4)で触れたように、高低以外に中のアクセントがあることも関係している。これについては、次の機会にゆずりたい。
 

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