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新聞記事を嘆く(32) 前置修飾

 まえがきについては、「新聞記事を嘆く(1)」をお読みください。
 今回は「元家庭教師に猶予判決」と題する記事で、そのまま引用すれば下記のようになります。
 <「学研の家庭教師」として派遣され、勉強を教えていた高校1年の女子生徒の体を無理やり触るなどとしたとして強制わいせつなどの罪に問われた自営業の吉原俊哉被告(58)=大阪府四條畷市=の判決が7日、大阪地裁であった。>
 この記事には、何も間違いはありません。ただ、文の評価の基準の一つに「心地よさ」というのがあります。すなわち、その文を読んで内容が頭にすらすらと入るかどうかです。その意味で、この記事には問題があります。
 すなわち、「「学研の家庭教師」として派遣され、勉強を教えていた高校1年の女子生徒」まで読んだ段階で、「高校1年の女子生徒が、「学研の家庭教師」として派遣され、勉強を教えていた」と読者は理解しますが、さらに読み進めていくうちに、それが間違いであって、「派遣され」と「罪に問われた」との二つの語句が「吉原俊哉被告」を修飾していることが分かります。もちろん「高校1年の女子生徒」が、「学研の家庭教師」として派遣されることはありえない訳ですが、一時的とはいえ読者の頭を混乱させる文はやはり書くべきではありません。
 この問題は、前置修飾のみしか行えないという日本語の欠点が招いたもので、関係代名詞をもつ欧米語であれば後置修飾になるので問題を生じることはありません。すなわち、たとえば英語であれば、まずこの文の主語「吉原俊哉被告」が冒頭に来て、関係代名詞whoを主語とする関係代名詞節で「派遣された」及び「罪に問われた」が述べられる訳です。
 記者としては、このような日本語の欠点を十分認識して、もっと分かり易い文を書くべきではないでしょうか?たとえば、「勉強を教えていた」という表現を「指導相手の」に変更して「「学研の家庭教師」として派遣され、指導相手の高校1年の女子生徒の体を無理やり触るなどとしたとして強制わいせつなどの罪に問われた自営業の吉原俊哉被告(58)・・・」とすればずいぶん分かり易くなります。
 また「強制わいせつなどの罪に問われた自営業の吉原俊哉被告(58)=大阪府四條畷市=の判決が7日、大阪地裁であった。被告は、「学研の家庭教師」として派遣され、勉強を教えていた高校1年の女子生徒の体を無理やり触るなどしたとされている。」とすれば、文字数(句読点含む)は元の105から112に増えますが、分かり易さは格段によくなります。
 元の文は、「教育に新聞を!」の観点からすると、改善する必要があります。
 
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