HOME » 日本語 » 新聞記事 » 新聞記事を嘆く(31) 名詞の形容動詞化

新聞記事を嘆く(31) 名詞の形容動詞化

まえがきについては、「新聞記事を嘆く(1)」をお読みください。
今回は「「縄文=ユートピア」はホント?」と題する記事で、そのまま引用すれば下記のようになります。
<注目は、約300基の墓のうち約20基に出土が偏る点。>
これを読まれたみなさんは、「一体この文のどこに問題があるのだ?」という疑問をお持ちになる方もおられるでしょうし、よく読めば「注目は、」の部分に違和感がないでもないと思われる方もおられるでしょう。
世の中では「・・・注目だ」という表現がよく使われており、インターネットで検索すると「「働き方改革国会」に注目だ!」といような例が出てきます。すなわち、今回の記事は<約300基の墓のうち約20基に出土が偏る点が、注目だ。>という主語+述語の文の述語を倒置させて「注目」を文の冒頭に移動させたことになります。「注目」は名詞で、「だ」は断定の助動詞なので、この文は「名詞=名詞」を表す文であるということになりますが、「点=注目」は成立しません。主語のうしろに形容詞又は形容動詞のような修飾語があれば、文が成立するので、この文の筆者は「注目だ」を「元気だ」と同じような形容動詞と見なしていたのかもしれません。ただ形容動詞であれば、連体修飾形の語尾に「な」が付きますが、「注目な」という日本語はなく、別の言い方にしなければなりません。あくまでも「注目」という名詞を使うのであれば、「・・・が、注目に値する」とすることができます。また「注目」に「する」を付ければ、「注目する」という動詞ができるので、「・・・が、注目される」とすることもできます。
最近よく使われている「人気だ」「話題だ」「問題だ」などはすべて名詞+断定の助動詞「だ」の構造になっていますが、これらは形容動詞のような感覚で使われています。「人気な」「話題な」「問題な」はすべて正式の日本語ではありませんが、これらのことばの被修飾語として形式名詞「の」を使った「人気なのは」「話題なのは」「問題なのは」は、ほとんど違和感なく使われています。今回の記事でも冒頭が「注目なのは」になっていれば、かなり違和感が薄れます。
ただし、「教育に新聞を!」というキャンペーンを張ったり、「当社の記事は大学入試の国語の問題にもっともよく引用されている」と宣伝したりするのであれば、やはり記事の文章は日本語として正しい模範的なものでなければなりません。
したがって、今回の記事は<注目されるのは、約300基の墓のうち約20基に出土が偏る点である。>又は<約300基の墓のうち約20基に出土が偏る点が、注目される。>と訂正されるようお勧めします。
 
この新聞記事のコピーを見たい方は、ここをクリックしてください。問題のある個所は、赤い傍線で示されています。

MENU

Copyright(c) 2019 TECHXEL All Rights Reserved.