HOME » 日本語 » 新聞記事 » 新聞記事を嘆く(26) など

新聞記事を嘆く(26) など

まえがきについては、「新聞記事を嘆く(1)」をお読みください。
 このたび取り上げるのは、「トランプ氏変わる対日観」と題する記事で、その本文をそのまま引用すれば下記のようになる。
 <日米同盟の重要性を何度も強調するなど、在日米軍撤退論までほのめかしたかつての発言とは様変わり>(下線は筆者による)
 この記事を読んで、すんなりと理解した読者と違和感を覚えた読者とがいるのではなかろうか?「強調するなど」は、「強調するなどのように」又は「強調するなどの」の省略形であると考えてみよう。前者は連用語なので、この場合の被修飾語は、用言であり、その候補は「ほのめかした」又は「様変わり(している)」になる。すなわち「日米同盟の重要性を何度も強調するなどのように、在日米軍撤退論までほのめかした」又は「日米同盟の重要性を何度も強調するなどのように、・・・かつての発言とは様変わり(している)」となる。前者であれば、文の意味が理解できず、後者であれば理解できる。「強調するなど」が、「強調するなどの」の省略形であると考えた場合、「・・・などの」という語句は、それに続く語句の具体的な例を示す役目を果たす(例:「りんごやみかんなどの果物」、「物理や数学などの理科系科目」)。ところが「・・・を強調するなど」は、「・・・かつての発言」の具体的な例ではない。「強調するなど」が、「強調するなどのように」の省略形であると考えたとしても、それにつながる語句の候補が二つあって明確には定まらないため、文の意味を明確にするための別の構文を考えなければならない。
 今回取り上げた文の問題点は、文の前半が副助詞「など」に読点(、)を付けた形で終わっているために、「・・・など」が文の後半のどこにつながるのかすぐに判断できないことにある。この記事の意味をよく考えると、「・・・など」が、文の主語であることが分かる。これを念頭に文を書き換えれば、たとえば「日米同盟の重要性を何度も強調するなどの発言が、在日米軍撤退論までほのめかしたかつての言い方とは様変わりしている」となる。このように書き換えることにより、この記事の意図として「・・・など」が、それに続く語句の例を示すのではなく、文の主語を表していることが明確になる。
 どんな場合であっても、複数の意味に解釈できたり、意味が不明であったりするような文は絶対に書いてはならない。これは特に文章を書くことを仕事としている者にとっての鉄則である。新聞社の校閲部門は、一体何を校閲しているのだろうか?また筆者が毎回言っているように、このような悪文を書くようであれば、「教育に新聞を」というキャンペーンを張る資格がないことを胸に刻むべきである。
 
 この記事の原文を見たい人は、ここをクリックしてください。

MENU

Copyright(c) 2017 TECHXEL All Rights Reserved.