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新聞記事を嘆く(25) 副詞

まえがきについては、「新聞記事を嘆く(1)」をお読みください。
 このたび取り上げるのは、「内憂トランプ氏、長すぎる旅」と題する記事で、その本文をそのまま引用すれば下記のようになる。
 <長い旅が始まる。貿易と北朝鮮の問題について話し合う。とても成功した旅になるだろう>(下線は筆者による)
 下線部の「とても成功した旅になるだろう」について違和感を覚える読者がいるだろう。その理由は、「とても」という副詞が「成功した」という動詞を修飾していること、及び旅はまだ終わっていないのに「成功した」という動詞の過去形が使われていること、にある。「とても」は、「非常に」と同じく程度の高いことを表す副詞であるが、被修飾語は形容詞又は形容動詞でなければならない(例:とても美しい女性。とても静かな環境。とても元気だ)。「成功した」は、「成功する」という動詞の連用形「成功し」に過去を表す助動詞「た」が連なった形で、「成功した」は名詞「旅」を修飾しているので、「た」は連体形である。すなわち「成功した」は、連体修飾語なので、形容詞や形容動詞の連体形と同類の語とみなして「とても」という副詞を使ったものと思われる。
 上記の<  >に囲まれた文章はトランプ氏の英語の発言を和訳したものである。元の英語は多分I will have a very successful trip.又はMy trip will be very successful.のような文であると想像される。successfulは形容詞で、手元の英和辞典によれば、「(・・・に)成功した」や「(・・・と)うまくいった」のような訳が当てられている。したがって上記の記事は、successfulを「成功した」と訳したと見られるが、下線部分は日本語として不自然な表現である。上記の英文の訳として「今回の旅はとてもうまく行くだろう」でどうであろうか?これであれば、副詞「とても」が、形容詞「うまい」の連用形「うまく」を修飾するので文法上問題がない。また「うまく行く」も会話の表現としては十分受容できると思われる。
 <  >内を書き改めると<長い旅が始まる。貿易と北朝鮮の問題について話し合う。今回の旅はとてもうまく行くだろう>となる。なお「とても」という副詞にこだわらなければ、たとえば「今回の旅はきっと成功するだろう」となって、上記の記事の「成功」ということばが踏襲されることになる。想像するに原文にveryということばがあって、これを無視せずに訳したことによって日本語の表現が不自然になったのではなかろうか?
 
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