HOME » 日本語 » 新聞記事 » 新聞記事を嘆く(2) 複数の連体修飾句

新聞記事を嘆く(2) 複数の連体修飾句

 筆者は、A新聞社の日刊紙を購読しています。A新聞社は、「教育に新聞を」や「天○○語をノートに書き写そう」のキャンペーンを行ったり、「本紙の記事は、大学入試の国語の問題によく引用されている」という宣伝をしたりしています。これらのことから、この新聞の記事は学生が真似するに値する立派な文章で書かれているのだろうと思う人も多いでしょう。ところが、実際はそうではありません。筆者がこの新聞に目を通していると、文法面や表現面で絶対に真似をしてはならない文が登場することがあります。前回に引き続き「これは真似してはいけない!」と思われる例を紹介します。
これは「『加害の記憶』めぐる対立」と題する記事で、そのまま引用すれば下記のようになります。
<いまこそ、国が戦争に踏み出し、人を加害に駆り立てる構造を見つめ直す時なのだ>
「・・・し、~する」というのはよくみかける構文です。この記事では「・・・し、~する構造」及び「・・・し、~する時」のように二つの動詞が名詞を修飾するという連体修飾句が二重になっています。この文の問題点は「いまこそ、国が戦争に踏み出し、構造を見つめ直す時なのだ」、すなわち「いまこそ、国が戦争に踏み出す時であり、人を加害に駆り立てる構造を見つめ直す時なのだ」と読めることにあります。もちろんこの記事全体の主旨からして、筆者が言いたいのは「いまこそ、国が戦争に踏み出す構造と、人を加害に駆り立てる構造とを見つめ直す時なのだ」と解釈するのが妥当です。しかし、二つの解釈ができる文を書いてはいけないことは、書くことを職業にしている人にとって常識のはずです。この文を大幅に変えずに修正するとすれば、「いまこそ、国が戦争に踏み出して人を加害に駆り立てる構造を、見つめ直す時なのだ」というのが筆者の案です。
大新聞社の編集委員ともあろう人がこのようなあいまいな文を堂々と掲げるのは、嘆かわしいかぎりです。一般記者の実力も推して知るべしです。彼は、この記事を出稿する前に読み返したのでしょうか?A新聞社の校正部門は、一体何をチェックしていたのでしょうか?「教育に新聞を!」というキャンペーンの意味は、「新聞記事から悪文を探し出してどうすれば良い文になるか検討しよう!」なのでしょうか?
この新聞記事のコピーを見たい方は、ここをクリックしてください。
 

MENU

Copyright(c) 2016 TECHXEL All Rights Reserved.