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新聞記事を嘆く(14) 入れ子構造

 まえがきについては、「新聞記事を嘆く(1)」をお読みください。
このたび取り上げるのは、「書店長ら拘束認める  香港で共産党批判本」と題する記事(記者名入り)で、その文をそのまま引用すれば下記のようになる。
<複数の米メディアは昨年8月、米政府が中国当局者が観光や商用ビザで米国に入り、容疑者を捜し出して帰国するよう脅迫していることを確認>
この記事を読んで内容がすんなりと頭に入った読者は、いるだろうか?
この文では、ある主語と述語の関係(以下主述関係と言う)の中に別の主述関係が入り込んでいて、これを「入れ子構造」と呼んでいる。
この文の入れ子構造を明確にするために、大括弧[  ]、中括弧{  }及び小括弧(  )を使って整理してみよう。
[複数の米メディアは昨年8月、{米政府が(中国当局者が観光や商用ビザで米国に入り、容疑者を捜し出して帰国するよう脅迫している)ことを確認}]
これを見れば、この文は「三重入れ子構造」になっているのに、もっとも外側の主語「米メディア」に対する述語が欠落しており、主述関係が成立していないことが分かる。これがこの文の最大の問題である。この述語を補えば、たとえば次のようになるだろう。
[複数の米メディアは昨年8月、{米政府が(中国当局者が観光や商用ビザで米国に入り、容疑者を捜し出して帰国するよう脅迫している)ことを確認}したと報道した]
ところがさらに問題がある。それは主語「中国当局者」の述語は、「脅迫している」であるが、「誰に脅迫している」のかが抜けていることである。脅迫されているのは、「中国当局者の部下」であると考えられるので、それを補うと<複数の米メディアは昨年8月、米政府が中国当局者が観光や商用ビザで米国に入り、容疑者を捜し出して帰国するよう部下に脅迫していることを確認したと報道した>となる。
しかし、これでよいのだろうか?いや、これでも読者は内容の理解に苦しむだろう。一般的に、分かりやすい文を書くコツの一つとして、「主語と述語とをできるだけ接近させること」がある。
まず、もっとも外側の主語と述語とを接近させると<複数の米メディアは昨年8月、報道した>となる。その内側は、<米政府が確認した>で、もっとも内側は、<中国当局者が、観光や商用ビザで中国に入り、容疑者を捜し出して帰国するよう部下に脅迫している>である。これらを読者に理解しやすいように、書き改めると、次のようになる。
<複数の米メディア昨年8月の報道によれば、中国では観光や商用ビザで米国に入り、容疑者を捜し出して帰国するよう中国当局者が、部下に脅迫していることを、米政府が確認した、とのことである
これは、もっとも外側の主述関係を解消し副詞句にすることによって、三重の入れ子構造を二重にした改善案である。これ以外にも改善案があると思われるので、みなさんも考えてみていただきたい。
このように、主述関係の述語及び動詞の目的語がぬけ、しかもそれらを補ったとしても極めて難解な記事を掲載するとは、「記事を書いて収入を得ている者」のすることだろうか?あきれてものが言えない次第である。
この記事の原文を見たい人は、ここをクリックしてください。
 

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