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新聞記事を嘆く(29)並列の助詞「と」の用法

まえがきについては、「新聞記事を嘆く(1)」をお読みください。
 このたび取り上げるのは、「北朝鮮の核実験中止「歓迎」 全ミサイル廃棄 目標」と題する記事で、本文をそのまま引用すれば下記のようになる。
 <さらに、北朝鮮の大量破壊兵器と、全ての射程のミサイル廃棄の実現を目標とすることでも一致した>(下線は筆者による)
 ここで並列の助詞「と」が使われている。並列の表現を「AとB」と表せば、この記事ではAが「北朝鮮の大量破壊兵器」で、Bが「全ての射程のミサイル廃棄」となる。記事は「AとBのC」という構成になっていてCは「実現」である。したがって、読者はまず「北朝鮮の大量破壊兵器の実現と全ての射程のミサイル廃棄の実現」と受け取るが、すぐにそれが誤りだと気付き、「北朝鮮の大量破壊兵器の廃棄と全ての射程のミサイルの廃棄の実現」と解釈を改めるだろう。このような誤解を招くおそれのある文を書いてはならない。
 もともとこの記事の文の問題点は「ミサイル廃棄」という言い方にあった。「大量破壊兵器」は熟語であるが、「ミサイル廃棄」は熟語ではなく、本来「ミサイルの廃棄」というべきであった。当初から「北朝鮮の大量破壊兵器と、全ての射程のミサイルの廃棄の実現」としておけば誤解を招くことはなかったはずである。
 浅尾芳之助監修「簡明 口語文法」日栄社(1956)の格助詞「と」の項には、用法が四つ記されており、その一つが「事物の並列」で、「並列の「と」は、並べられるものの下にそれぞれ一つずつ添えるのを原則とするが、誤解される恐れのない場合には、最後の「と」は省いてもよい」という注記が入っている。新聞記事のように読者に明確に情報を伝える使命をもつ文では、常にこの原則を守るべきである。そうすれば、主題の記事の下線部は「北朝鮮の大量破壊兵器と全ての射程のミサイルとの廃棄の実現」となって、誤解の余地がなくなる(最初の「と」のうしろの読点はもともと不要である)。
 新聞記者や校閲部門の人は、この「と」の用法の原則について知らないのだろうか?新聞記者、雑誌記者、作家等の「書いていくら」を生業としている人々にとって、このような基本的な知識さえないとすれば、誠に嘆かわしいと言わざるをえない。
 
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