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新聞記事を嘆く(20) 並列

まえがきについては、「新聞記事を嘆く(1)」をお読みください。
 このたび取り上げるのは、「中国、愛国教育を強化」と題する記事で、その本文をそのまま引用すれば下記のようになる。
 <国歌を商業広告やBGMに使うことを禁じ、公共の場で歌詞を変えたり、侮辱したりすれば、15日以内の拘留のほか、悪質な場合には刑事責任も追及する>(下線は筆者による)
 この記事の下線部の意味は、一般の読者であれば、容易に理解でき、違和感を覚えないかもしれない。しかし実際には、日本語として間違った表現であり、常々「教育に新聞を」というキャンペーンを張っているからには、正しい表現にする必要がある。下線部分の修飾語を省くと骨子は「拘留のほか、刑事責任も追及する」となる。この中の「も」は、副助詞と呼ばれ、「新明解国語辞典」三省堂(1983)によれば、「同様の事柄があることを言外に表す」役目をもっている。骨子をさらに単純化すると「拘留と刑事責任とを追及する」となり、二つの名詞「拘留」と「刑事責任」とが並列されていることになるが、「拘留を追及する」という日本語はない。したがって、下線部が間違った表現であることは明らかである。
 それでは訂正案を考えてみよう。この記事の記者が、並列しようとしたのは、「拘留」と「刑事責任の追及」とである。文末には必ず動詞を置くので、動詞句を並列する必要がある。「拘留」を含む動詞句として「拘留を課す」とする。「刑事責任も追究する」の助詞「も」は、名詞又は名詞句の並列の意味をもつのに、「刑事責任」と並列されるもう一方の名詞が存在しないので、ここでは使うことができず、助詞「を」に置き換えなければならない。記者の言いたいのは、「悪質な場合には、拘留を課すことに加えて刑事責任を追究する」なので、記事の下線部分を「15日以内の拘留を課し、悪質な場合にはさらに刑事責任を追及する」に訂正することを提案する。
 
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