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新聞記事を嘆く(15) 比較級

まえがきについては、「新聞記事を嘆く(1)」をお読みください。
 このたび取り上げるのは、「京阪神の高速料金 より距離に連動へ」と題する記事で、その本文をそのまま引用すれば下記のようになる。
 <国土交通省が16日に発表した新しい料金案では、いまより走行距離に連動した制度になる>
 筆者が、この記事に目を留めたのは、見出しの<より距離に連動へ>であった。この表現は違和感があるが、見出しは簡潔な表現が好まれるので、やむをえないかもしれないと思い、本文に目を通した。本文でも<いまより走行距離に連動した>という見出しを踏襲した表現になっている。
 これは比較級の問題である。英語の形容詞及び副詞には、原級、比較級及び最上級の三つの形がある。比較級及び最上級には規則変化と不規則変化とがある。たとえば、beautiful-more beautiful-most beautifulやyoung-younger-youngestが規則変化であり、good-better-bestが不規則変化である。日本語では、形容詞及び形容動詞の単語自体が活用して比較級を作ることはなく、「もっと高い」「より若い」「更に遠い」のように単語の前に副詞「もっと」「より」「更に」を挿入する。ただし、「飛行機で行った方が速い」のように、「もっと」又は「より」を使わなくても、「方が」を使って比較級を表すことができる。「飛行機で行った方が、新幹線より速い」の場合の「より」は、格助詞である。また「より速いのは新幹線だ」の場合の「より」は、副詞である。なお日本語では副詞に比較級がなく、「より速く着くのは新幹線だ」のように形容詞「速い」の連用形「速く」が副詞の役目をしている。
 今回の記事の本文では、<いまより>ということばから<いま>が比較の対象であることが分かる。日本語では形容詞及び形容動詞が比較に使われるが、この記事にはそれらがなく、<いまより>は動詞+助動詞の<連動した>を修飾している。このように先に<いまより>という比較の対象を示すことばがあるにもかかわらず、うしろに形容詞又は形容動詞が存在しないことが今回の記事の問題点である。なお、<いま>は名詞で、<より>は助詞である。
 今回の記事の見出しは、<より距離に連動へ>となっており、「より」は比較級を作る副詞であるが、うしろに形容詞又は形容動詞が存在しない。これが違和感の生じる原因である。
 記事の改善案としては
 <いまより走行距離への連動の度合いが高い制度になる>
のように名詞「度合い」及び形容詞「高い」を挿入することになる。
 見出しの改善案としては
 <距離への連動の度合いを高く>
のようにすれば、あえて<より高く>としなくても比較の意味は汲み取れる。見出しは簡潔さを要求されるために、当初の表現になったものと考えられるが、語法を無視した表現であってはならない。
 なお、三省堂の「新明解国語辞典」によれば、副詞「より」は、「[翻訳調の言い方で]何かに比べて程度が超えていることを表す」となっており、見出しに違和感を抱く要素にこの「翻訳調」も関係していると考えられる。
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